年末年始の帰省の移動中に読んだ。
相変わらずおもしろい。
概要
シリーズの概要
著者である森博嗣氏が
毎年年末に出している
つぶやき100個+それらの解説本。
本作がの12作目。
歴代タイトル
これまでのシリーズタイトルは
- つぶやきのくりーむ(つぶやきのクリーム)
- つぼやきのてりーぬ(つぼやきのテリーヌ)
- つぼねのかとりーぬ(つぼねのカトリーヌ)
- つんどらもんすーん(ツンドラモンスーン)
- つぼみきのこむーす(つぼみ茸ムース)
- つぶさにみるふぃーゆ(つぶさにミルフィーユ)
- つきよのさらさーて(月夜のサラサーテ)
- つんつんぶらざーず(つんつんブラザーズ)
- つべるくりんむーちょ(ツベルクリンムーチョ)
- ついかいのこよーて(追懐のコヨーテ)
- つみきしんどろーむ(積み木シンドローム)
- つまのおんぱれーど(妻のオンパレード)
であり、
タイトルの共通点は
- 「つ」で始まって
- 最後から2番目は「ー」で
- 全9文字
であること。
※小さい文字は文字数にカウントせず
第一作である
つぶやきのクリームの和訳が
「つぶよりなつぶやき」
で名が体を表していて、
以降は言葉遊びなタイトルに
なっている。
シリーズ名としては
- クリームシリーズ
- 「つ」で始まるシリーズ
とか書かれているのを
見たことがある。
もう1作目が出てから12年か、、、
つぶやきの分類
つぶやき集だから
内容に統一性はないんだけど、
ボクが分類わけするなら
- 国語系 (28.「しかない」「すぎる」という強調表現によって失われた機微に思いを馳せる。)
- 社会系 (21.多数の老人が少数の若者に支えられている?まだ、その反対なのでは?)
- 時事系 (95.選挙中の銃撃についてボクが思ったのは、街頭演説がなぜ必要なのか?である。)
- 著者の日常系 (43.奥様はガーデナ。)
- その他 (17.アドバイスをする目的は、相手に好かれることではない。)
って感じかと。
()内は本書におけるつぶやきの例。目次より抜粋。
分類わけは「その他」を入れれば
抜け漏れが無くなるからいいよね(笑)
初期は時事系は
全くなかったんだけど、
2~3年前くらいから登場。
理由としては
長く語られるネタ
(ウクライナ侵略、新型コロナ)
だからとのことなんだけど、
好評らしいから今後も
ぽつぽつ出てくるかな?
本書には
そのものズバリっていう
時事ネタはないけど、
これが元ネタだろうなぁ
っていう時事ネタは
何個かあるように思える(後述)。
全体の感想
100個それぞれのネタは
自分にとって
- 全く考えもしなかったこと
- 考えてはいたけど結論が出ず(言語化できず)棚上げしていたこと
- 既に考えていたこと
の3つに分けられるんだけど、
①
全く考えもしなかったこと
からの学びと、
②
考えてはいたけど
結論が出ず(言語化できず)
棚上げしていたこと
が言語化されているインパクトと、
③
既に考えていたことに対する
「やっぱそう思うよね!」感
を味わうことが、
ボクにとって本書を
読む価値だと思っている。
具体例は後述。
これらの中でも特に
②に魅力を感じるんだけど、
これって言い換えれば
自分で考え切れてない
ってことだから、
思考力という意味では
②の魅力が減って③の魅力が
増えたほうがいいのかもしれない。
当然
中にはハズレのネタもあるけど、
100個もあるんだから
それはしかたがない。
気になったフレーズ 5選
以下、
気になったフレーズと
その感想を書いていく。
正直ネタ100個中の70個くらいに
気になるフレーズがあるんだけど、
それだとキリがないし
著作権的にアウトだと思うから、
上述した分類、
- 国語系
- 社会系
- 時事系
- 著者の日常系
- その他
からひとつずつ挙げてみる。
①「ないです」「いいです」「よかったです」はもう普通になっている。(国語系)
ボクはこれまで
考えたこともなかった系の話。
全然
意識したことが無かったんだけど、
著者が以前にも別の本で
書いていたことが深堀りされていた。
簡単に言うと
「です」は名詞の後に
来るものだから
「ないです」は文法的に誤りで、
著者にとってそういう「です」は
まるでタラちゃんが
話しているように聞こえる、
とのこと。
ここまでだったら
「へーそうなんだ」
「時代と共に使われ方も変わっていくよね」
「タラちゃんwww」
で終わりなんだけど、
その後に続く文がこれ↓。
「良かったです」がおかしくない人は、「走ったです」というのだろうか?タラちゃんはそう言っているように思う。タラちゃんを責めているのではない。
妻のオンパレード 3/100
「タラちゃんを責めているのではない。」
がこれぞ森博嗣節って感じで最高。
これを読んだ後、
人の言葉に「です」が入ってると
「今のはタラちゃん語か?」と
考えるようになってしまった(笑)
②お札もお守りも霊感商法(社会系)
たぶん統一教会問題を
一般化したんだと思う。
このフレーズは
「宗教って、そもそも全部、霊感商法なのではないか」と書いたら叱られる?
というネタ内に書かれた
フレーズなんだけど、
このネタに書かれていること
全てに対して
ボクもそう考えてた!
となって
めっちゃテンションが上がった(笑)
ボクにとっては
お坊さんが家に侵入してきて
仏壇の前で
ムニャムニャ言うだけで
何十万円ものお金がうごく
(しかも非課税!)のは意味不明で
霊感商法に他ならないんだけど、
ボク以外は
疑問を抱いてないっぽかった。
少なくとも表には出していなかった。
世間体とか土着のアレコレとかしがらみがあるのかな?
いずれにせよボクは不健全だと思った。
このニュースとか、「アホか?」と。
48歳男性が青ざめた…「お布施」の金額でお坊さんの怒りを買い、さらに「恐れていること」
ほんとこのページは
全文引用したいくらいだけど、
それはグッとこらえて
本質っぽい(とボクが思っている)
内容をまとめると、
- 金額に見合うだけのナニカが交換されることが商売
- 当事者同士が交換に合意すれば成立する
- そこに第三者の審査はいらない
- だからまっとうな商売も霊感商法も詐欺もグラデーション
- 犯罪かどうかはどこに線引きするの?
ということ。
線引きが困難な例として
神を信じた人と馬を信じた人が
挙げられていて、
納得感がすごかった↓。
馬に金を注ぎこんで(中略)不幸に巻き込まれた子供たちは、競馬に誘うような宣伝をTVで流していたではないか、と訴えるかもしれない。
馬券を売るときに、家庭環境が健全であることを確認しなかったのは、どうしてなのか、と糾弾されないのは、何故なのだろうか?
妻のオンパレード 6/100
ボクの親は
100均の2Lボトルに入った
“波動水”なる水を5,000円で
買ってたんだけど、
これは親が一時的(と思いたい)に
価値観をバグらされたことで
5,000円とただの水2Lの交換が
正当であると判断しちゃった
からなんだよな~
あとは在職時代の経験上、
コンサルっていうのも
特に線引きが難しい
部類に属すると思う。
度胸さえあれば誰でもできちゃうよ、あんなの
③理屈でなく感情に訴えることで大衆をコントロールできる、と踏んでいる(時事系)
ボクにとっては、
漠然と考えてたけど
言語化してこなかった系の話。
これは処理水問題を
受けての内容だと思う。
処理水反対記事の中には
「そんなにエビデンスが大事なのか」
みたいな
ボクからしたらとんでもない
主張が大手メディアから
されていたと記憶している。
ただ、
SNSの普及等によって
理屈を聞かず感情でしか
動かないタイプの人の声が目立つ
ようになってきており
(普通の人はわざわざ発信しないから)、
そういった人に対しては
感情に訴えることが効果的なので、
見かけ(SNS)上は
この手法は有効に見える。
本当に
見かけ上だけで済めばいいけど、、、
とボクは思っている。
日本の教育に期待したい。
③’大勢の意見が反映されない理由は、それが「意見」ではないから(時事系)
上とセットで気になったフレーズ。
意見じゃないならなんなの?
というと、
ただのお気持ち。
上と同じく
原発処理水問題に対応させると、
さんざん反対意見が出ても
処理水が放出されたのは、
お気持ちに対して
イチイチ応えてなんかいられない
から。
本書には
それを実現するための方法を持っていなければ、意見として無意味
(=意見ではない)と書かれている。
もし
処理水を放出することによる
悪影響の根拠と、
放出せずに処理水を廃棄する
方法が提示されていれば、
少しは議論になったかもしれない。
繰り返しになるけど、
ボクはいずれお気持ちだけで
政治が動くように
なってしまうのではないかと
危惧している。
最近SNSで話題になってる
NPO等のいわゆる公金チューチュー問題とかを
見てるとね、、、
中枢の人材には
まともであってもらいたい。
こう考えると水産物の輸入を禁止した中国って、、、
いや、きっと外交上の戦略とかであって
決してお気持ちで国が動いたわけでは、、、
④便利なデバイスが、効率が良いとは限らない(著者の日常系)
これは
タッチパネルより
物理ボタンの方が良くない?
っていう話からのフレーズ。
個人的には
そうかな…そうかも…
って感じだけど、
ちゃんと読んだら
「~良い(断定)」ではなく
「~良いとは限らない」
となっているので
真か偽かで言えば
間違いなく真。
例として挙げられていた
タッチパネルは、
たしかに触覚を排除しちゃったから
その分不便になったともいえる。
物理ボタンの携帯時代は
ノールックでメールを打てたけど、
タッチパネルのスマホじゃ
それはできないもんね。
年齢のせいかもしれないけど、、、
タッチパネルネイティブの人は
ひょっとしたらできたりして?
えっ、音声入力?
それはまだ各種デメリット(↓)があるから
便利とも効率が良いとも言えない。
この「どちらかといえば」というのは、何なのだ?(その他)
よくある
質問の答えの番号に
チェックをつける書類の話。
日本語系かもしれない
話し言葉と書き言葉が
混ざっちゃってる系
というか、
厳密な書き方をすると
読めない人が出てくるから
読める人が察しろ系
というか、
書類の作り手が何も
考えてない雰囲気お気持ち派系
というか、
なんかそんな感じの
書類に突っ込んでいる。
やっぱり日本語系だな(笑)
ボクにとっては共感系。
以下の引用が全て。
比較的多い設問として、賛成、どちらかといえば賛成、わからない、どちらかといえば反対、反対」の中から選べというものがある。この「どちらかといえば」というのは、何なのだ? イエスかノーかどちらかを選べといわれれば、という意味だと思うが、そもそも、どちらかを選べといわれているのだ。また、どちらかといえば賛成は、賛成の中に含まれないのだろうか? どちらかといえばわからない、という人はいないのか?
妻のオンパレード 13/100 にボクが太字化
ボクがこの手の書類に
思ってることとしては、
否定文に対して
「はい、いいえ」で答えさせるやつ。
あれややこしいから
設問は肯定文で統一してほしい。
特に
外国人向けに英訳した時に
混乱すると思うんだけど、
どうなんだろう?↓
【日本語の場合】
Q:あなたは昨日飲酒していませんか?
A:いいえ
この場合、飲んでる。
【英語の場合】
Q:Didn’t you drink yesterday?
A:No
この場合、飲んでない。
健康診断のアンケートとかって
英語版はどうなってるんだろ?
余談の自分語り。
ボクは留学時代、否定形の疑問文に対して
いつもyes noを逆に回答してしまっていたので、
ある時から
「したらyes、しなかったらNo」
と自分に刷り込ませてた。
結果、帰国後何回かこの手のアンケートに
(日英がこんがらがって)間違った解答をして、
担当者から呼び出されて確認されたことがある
まとめ
- 森博嗣のクリームシリーズの新刊が出た
- 相変わらず面白い
- 漠然と考えていることが言語化されている話が特に良かった
- 別にこのままでもいいんだけど、自分でも言語化して「これボクも考えたことだ!」っていう話の割合が多くなればいいな、と思った。
それでは~
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