2024年7月を最後に
読んだ本の記録をしてなかったので、
8月以降の読書記録を
ここでまとめてしようと思う。
読んでからかなり時間が経っているので、
その本に対する印象が
ダイレクトに表れていると思う。
7月までの記録はこちら↓。
【橘玲】シンプルで合理的な人生設計
幸福の土台には金融資本、人的資本、社会資本の3つがあるとして、それぞれの資本について合理的に設計してみましょう、という本。
「合理的選択 ≒ コスパ、タイパ、リスパの最適化」であり、金融、人的、社会の順で最適化しやすい(=不確定要素が少ない)。
金融資本には最適解が存在している。それは(まともな)株式インデックスファンド。加えて大切なのが、資産運用について日頃考えないこと(考えてる時間分、タイパが悪くなるから)。
人的資本の最適解は、コスパよくライバルに勝つということ。とはいえ競争はコスパが悪いので、自分の能力が優位性を持つ市場を見つけて、そこで競争せず楽に勝ちをつかむこと。
社会資本の最適解は、勝ち馬に乗るということ。最適化が難しいだけあって漠然としている。パフォーマンスを磨いたうえで、所属するネットワークを吟味しろ、ってことだと理解した。
橘玲本の特徴として、データから現状を正確に描写はしているけど、それを受けて「じゃあどうすればいいか?」という記述が少ないことが挙げられると思う。それは答えのないこと(人によって答えが異なること)だから仕方ないんだけど、それにしても本書のエピローグ前のまとめには取ってつけた感をなぜか感じてしまった。
【有川真由美】どこへ行っても「顔見知り」ができる人、できない人
著者の経験ベースの「顔見知りができる人のコミュニケーションの特徴」が書かれている。そしてその内容は(この手の本は今まで読んだことないはずなのに)「そりゃそうでしょ」って感じのモノばかり。リマインドにはなるけど、正直少し拍子抜け感。
1文でまとめると、「顔見知りができやすいかどうかは、人間とは冷たいものか温かいものか、どちらをデフォルトにしているかの差による」って感じかな(当然後者が顔見知りができる人)。
直前に事実/根拠ベースの本(↑の橘玲)を読んでいたこと、自分が著者の実績について無知なこと、著者と自分の属性/経験に乖離があることから、時折出てくる著者自身の実例にリアリティがなく薄っぺらく感じてしまった。生存者バイアスなのでは?とも(顔見知りができるコミュニケーションによって損した人もいるのでは?)。
そう訝しんでしまうのはボクのデフォルトが性悪説だからであり、それすなわち顔見知りを作りにくい人格ということ。実際ボクに顔見知りはいないので、論理的(対偶)に本書の内容の正しさを証明していることになる(笑)
【リチャード・ショットン】自分で選んでいるつもり: 行動科学に学ぶ驚異の心理バイアス
心理バイアスの説明と、その応用集。各章が「バイアスの説明→応用例」という構造になっていて、とても頭に入ってきやすい。
これって、きわどい言葉を使うなら合法詐欺のノウハウ集だよな、と。マイルドに言うと、錯覚させるテクニック集。定常的に使える効果もあれば、一回きりしか使えないから本書でネタバレしたら逆にその手法を使ってる会社は評判が落ちるのでは?っていうのもある。結局道具(技術)は使いようってことか。
売り方の裏側を知ることができて楽しいけど、こういうのを見てると騙されたくないという気持ちが湧いてきて、何も買う気がなくなっちゃう。あ、節約生活をしている身としては追い風だから都合がいいのか。
【尾崎俊介】アメリカは自己啓発本でできている: ベストセラーからひもとく
前半はアメリカに端を発する自己啓発の歴史っていう感じで面白かったんだけど、中盤の「父が子供に語るジャンル」みたいなところからは単なるジャンル説明と代表例となる本の紹介、及びそれに対する著者の感想だけで終わっているような気がする(“ひもとく”とは?)。
「宗教の解釈の変更から自己啓発が始まった」みたいに単純になるほどと思えるところもあれば、イヤそれはこじつけでは?ってところもあって、それらを全部ひっくるめて新鮮で面白かった。
本書のような、いろんな書物からピースを集めてきてソレっぽい絵のパズルを仕上げるような、ふわふわした根拠の上を綱渡りして向こう岸にたどり着いているような本が新鮮だった。こういうのが文系の論文なのかな?と妄想。正直こういう分野になると個人の趣味と学問の差がわからないんだけど、、、(ネット普及以前はともかく普及後は特に)
なので、本書に科研費が出てることに驚愕した(3年で200万)。この額を見て、文系研究者は大変なんだな~と見るか、それともこんなことに200万も出てんの?と見るか。ボクは正直もっと社会の役に立つことにお金を回せばいいのにと思うけど、そうではなく、こういうお金にならない/役に立たないことだけど後世に残しておくべき?ことに国がお金を払うというのは、ある意味正当なのかもしれない(後世に残すべきかどうかの判断には議論の余地があると思うけど)。
閑話休題。
自己啓発の分野に限らず、歴史って「何かに抑圧されている→そこに風穴を開ける何かが登場する→それが流行る→それが当然になり、いずれ廃れる→新たな抑圧要素が出てくる→以下繰り返し」なんだなって思った。ただ、当初は生きるためにそうならざるを得なかった的な純粋な感じ?なのに対して、近代以降はそこに資本主義の金儲け的な要素が混じってきて、なんか不純(というか醜い)だな、と。
最後に。
水は答えを知っているっていう日本発の本がアメリカで(日本でも?)ベストセラーになってるっていうのが相当ヤバイと思った(Amazonレビューにその片鱗が、、、)。
【菅原由一】タピオカ屋はどこへいったのか? 商売の始め方と儲け方がわかるビジネスのカラクリ
これは(ボクにとっては)気持ちがいいほどにタイトル詐欺本。
飲食店の始め方、維持の仕方、広げ方、失敗事例、撤退時期の見極め等々、「タピオカ屋の一生」を軸にビジネスのカラクリが説明されるのかと思ったら、全然そんなことなかった。
主題のタピオカ屋について触れられているのは冒頭4ページのみ。たまに取って付けたようにタピオカ屋要素が出てくるけど、それはタピオカ屋である必要は何もない。タピオカ屋そっちのけで副題「ビジネスのカラクリ」について浅く広く書かれているのが本書。
本書の節タイトルには「なぜ〇〇は××しないのか?」という構文が頻出するにもかかわらず、本書には「なぜ客を騙すような釣りタイトルは無くならないのか?」の節が無い。「(嘘スレスレでも)注目を集める看板で集客し、売り切る or 釣った客の一部をリピーターにする戦略」は本書の趣旨に沿うと思うのに。。。もし改訂版でこの節を追加するの際には、「何を隠そう、本書もこの戦略を採用しています」の一文を忘れずに書いていただきたい(笑)
あと、「なぜ〇〇は××しないのか?」構文には罠があると思っていて、それは「××している〇〇が存在している」という事実を隠してしまっているということ。こういう広義での「騙す要素」はビジネスではほぼ100%使われてるんだけど、決して詐欺とは呼ばれない。その境目がボクにはわからない。一つ言えるのは、ボクの中にあるビジネスと詐欺の境目は、世の中で思われているビジネスと詐欺の境目よりも、よっぽどビジネス寄りにある(=詐欺判定が広い)ってことだろうな。
【橘玲】世界はなぜ地獄になるのか
いつもの橘節。結論は「今は昔と比べて地獄であると同時に天国でもある。地雷を踏まず幸せに生きてね」って感じ。
リベラル社会に対するポリコレの必要性は理解できた。ただ、ボクはマイノリティの人?と関わりない人生を送っている(という認識な)ので、正直どうでもいい。そして何よりリベラルが面倒くさすぎる。関わりたくない。これに真面目に取り組んでいる人、取り組まざるを得ない人に同情する。ただ、ボクも社会の一員なわけだから、ポリコレ関連で公式に決まった事にはちゃんと従おうと思う。その第一歩としてTwitterのことをXと呼ぶようにしよう(違う)。
SNSの炎上について一つ言いたいのが、当事者以外は黙って聞いてろってこと(あるいはボクみたいに自分のホーム(ブログ)で虚空に向かって吠えてろ、ってこと)。まぁSNSっていう仕組みがある以上、そういうわけにはいかないだろうけど。
事実を詳細に伝えるには言葉を尽くす必要があるけど、それを読む人は少ない。 SNS登場以前は、その少ない人たちの中でちゃんとした議論が行われていたんだと思う。それがSNS普及によって、うわべだけを見て印象でギャーギャー言う人たちが増えて、現場というか、実際が置いてきぼりになってるような気がする。それを利用して勢力を拡大してきたのが、いわゆるツイフェミとか呼ばれてる人たちなんじゃないかな?(妄想)
こんな感じで傍観者的な立ち位置で起こっている現象を眺めている分には面白いけど、当事者になったらたまったもんじゃないよなと思う。
本書のタイトル的に、地獄は今後やってくるものという風にも読める。今も充分地獄だと思うけど、もっとひどくなるということ。それは本書を読めば納得できる。その地獄はそのうち何かしらの収束を見るのか?それとも広がり続けるのか?
その答えを知る由はないけど、その最初期に生きることができてよかったなぁぐらいな感覚(ゲームの変遷をファミコンからリアルタイムで体験できてよかったな、みたいな感覚)でいるのがいいんじゃないかな、って思う。少なくともボクは地雷を撒きたくないし、踏みたくもない。
本書を読んで、地雷を撒き散らかしている人にはそれなりの理由があるということがわかったけど、それでもボクにはしょうもないわがままで周りに迷惑をばらまいているようにしか見えない。まぁそう思えるのも、たまたまボクが地雷になり得る問題に直面していないだけで、それだけ自分は恵まれていてラッキーだったなと思うのがいいんだろうな。
【斎藤幸平】人新世の「資本論」
このまま資本主義を続けてると地球がヤバいから、ちょっと成長するのやめませんか?と言う本。
これも結局は人間の進化速度と社会の発展速度のギャップに収束されると思う。つまり、問題は地球規模なんだけど、人間にはせいぜい150人ぐらいの集団を扱うのが関の山。つまり、「自分の周囲さえ良ければいい」という人としての本能がある中で、地球規模の問題解決に向かわなければいけないというところが大きな問題。だから神の視点でものを言うなら、人間は環境問題を解決できずに滅びるのが自然なんじゃないかな?
内容に関しては、賛否は別として、都度データを用いてわかりやすく書かれているため説得力があるし。何より主張が頭に入って来やすかった。こういった一般向けとは言えない主張をする際は、特に文章力って大事なんだなと思った。
ただそれも資本主義の愚かさについてのパートまでで、その後の著者のメインの主張と思われる脱成長communismは素晴らしいぞ!に関しては、「過去の偉人は実はこう言ってたから」みたいな論調でふわっとした印象がぬぐえなかった。
まぁ過去のことはデータが山ほどあるのに対して未来のことはデータが無いから、主張がふわっとするのも当然っちゃ当然か。それに著者の主張する未来は現在の延長ではないから余計想像しにくいっていうのもある。
で、その著者の主張する脱成長コミュニズムに関しては、どうしても机上の空論感が否めなかった。
なぜなら、このまま資本主義&成長を続ければ地球がヤバくなる保証もないし、著者提案の方式になったとして地球温暖化が抑制される保証もないから。そしてこれは構造上しょうがないんだけど、現在の資本主義を否定している著者が現在は資本主義に乗っかっているという矛盾があるから(行動で示していないから)。ボクが本書を読んだ限りでは、著者が資本主義に抗って何かをしている記載はなかったように思える。
行動で示していると言えばグレタ氏。本書を読んで、グレタ氏に対する評価が少し変わった。彼女は面倒くさい活動家としての側面がネットのネタにされがちだけど、至極まっとうなことを言っている(言っていた?)んだな、と。表現の仕方が間違ってるみたいな意見はあると思うけど、いわば資本主義に喧嘩を売っているわけだから、ああでもしないと聞き入れてもらえないってことじゃないかな?まぁそれでも聞き入れてもらえてないわけなんだけど。要するに詰んでるということ。
ボクは歴代の政治家たちはあらゆる問題に対して先延ばしを繰り返して未来にツケを回し続けるしょうもない人たちだと思ってるけど、そう言ってる自分も、こと環境問題に関しては先延ばしに加担してるっていうのが何とも、、、
半ば思考放棄なんだけど、もうそれが人間ってもんでしょっていう風に、ボクは結論付けてしまった。そんな中は真面目にちゃんと考えてる作者は偉いなあと思った(お前何様だ)。
【森巧尚】Python1年生 第2版 体験してわかる!会話でまなべる!プログラミングのしくみ
スクレイピングについて知りたくて、それが書かれているのがPython2年生という本らしいので前提知識として1年生の本書を読んだ。本書はPythonの初心者というより、Python含めたプログラム全般の初心者向けと感じた。これならいきなり2年生を読んでも良かったかな。
なお既にスクレイピングへの興味を失った模様(笑)
この手の本は、読者の知識の前提をどこに置くか(ターゲット設定)が難しそうだな、と感じた。「基本的なPCおよびプログラムの知識がある人が、やりたいことを実現するために必要な情報を得る」ことを目的とした場合、本を沢山あたるよりもネットで検索した方がいいんだろうか?
pythonの語源はニシキヘビ。
以上、
それでは~
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